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【映画】『嘘を愛する女』真実の中の愛

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

上映開始当日にわざわざ見に行くことはあまりないですが、『嘘を愛する女』見てきました。

ナイトシアターでしたが、意外に9割埋まってました。 

 

 

実際の事件をもとに作られた

本作、自分の愛する人のすべてが"嘘"だったという衝撃的な内容ですが、さらに衝撃的なのは、実際の事件が下敷きになっているということです。

 

…五年間連れ添った夫が、五十歳で病死しました。そこで、奥さんが区役所に死亡届を出そうとしたところ、本人の戸籍がそこにはないことが分かったのです。奥さんが持っていた戸籍抄本のコピーは偽物だったのです。

 実は夫が亡くなる前にも、不自然なことがありました。病状が悪くなる一方なのに、夫は絶対に病院に行こうとはしないのです。そこで奥さんが不審に思って、夫の勤務先である大学に問い合わせたのですが、そういう職員はいないとのことでした。夫の身分証明書が偽物だと分かったとき、亡くなる前の夫を問いつめたことがありました。しかし、夫は死ぬ間際に「死ぬしかなかった。本当は生きていたかったんだ」とだけ言い残して亡くなりました。奥さんは、警察に相談したりしていろいろと調べたのですが、夫の身元について手がかりになるようなものは何もありませんでした。夫はいったいどこの誰だったのでしょうか。

 夫だった男は、おそらく苦労して自分の出生の物語を創作したのでしょう。戸籍抄本を偽造し、身分証明書を偽造し、自分の人生そのものを偽造したのです。こうして、つじつまの合う物語を作ることで、彼は奥さんを欺いて結婚することが出来たのです。おそらく彼には隠さなければならない過去があったのでしょう。そして、嘘の物語を作ることでしか結婚できないと思ったのでしょう。そして、実際に彼は奥さんと結婚して、五年間の幸せな人生を手にすることが出来たのです。しかし、健康保険証を持たない彼は、病状が悪化するにもかかわらず、嘘を貫くために絶対に病院に行こうとはしなかったのです。そして、最後まで自分の正体を明かさなかったのです。しかし彼の心には、嘘をついた罪を背負わなければならない悲しみと、出来ることなら本当の人生を生きたかったという、かなうことのなかった、はかない思いが交錯していたことでしょう。「死ぬしかなかった。本当はもっと生きていたかったんだ」という彼の最後の言葉は、謎に満ちた彼の人生そのものではないでしょうか。いったい本当の彼は、どこで生まれて、どのように育ってきたのでしょうか。本当の出生の物語は、いったいどんなものだったのでしょうか。しかし、彼は真実を明かさぬまま、多くの謎を残してこの世を去っていったのです。…

出典:出生の秘密とその物語

現実の事件では、旦那さんの本当の素性は明かされないままだったようです。

自分が愛したその人が、自分に嘘をついている。自分の知っている人は、実は存在しない…

実際に直面した時、この現実は受け止めきれるものなんでしょうか?

 

小説と映画の違い

小説版と映画版では、ストーリーの根幹に違いはないものの、キャラや一部の流れに違いがあります。

 

まずは、由加利(長澤まさみ)の母への紹介に現れなかった桔平(高橋一生)が見つかった場所。

小説版では、新宿駅のホームで倒れた桔平は発見され、故郷に移るまでメインの舞台は新宿でした。映画版では、由加利の家付近の公園で桔平は発見されます。新宿は舞台として全く出てきません。

 

また、映画版では心葉(川栄李奈)が追加キャラとして登場。由加利が知らない桔平の一面を知る人物としてキーマンとなっています。

しかし、小説版で探偵である海原(吉田鋼太郎)が探偵として探し出した多くの情報を、心葉から受け取るという奇異な状況にあえて設定変更する必要があったのか疑問が残ります。

 

最後に、映画版ではキャラクター全体の由加利に対する対応がより厳しいものになっているように思いました。

例えば、職場の同僚の綾子(野波麻帆)は、小説版では桔平の嘘を解き明かそうとする由加利をフォローする良き友人です。しかし、映画版では、職場での地位を奪おうとするなどライバルとしての位置づけがより強く描かれています。

また、映画版のみに登場する心葉も、桔平をひそかに愛していた人間として、恋人である由加利に対しては対抗心をむき出しにします。

由加利は、こうした周囲の人々との軋轢と桔平への猜疑心の中で、"本当に桔平を愛していたのか"と自分に問いながら、悩みながらも真実を解き明かしていきます

 

バリキャリの恋愛観

本作、バリキャリの恋愛観という観点でも興味深い点があります。

 

由加利は30歳前後の設定で、食品メーカーで新商品の企画を担当。20代を仕事に全力で打ち込み、そろそろ結婚も考えようかというタイミングです。妹が先に結婚し家族からのプレッシャーも受けています。

5年以上同棲している桔平は研究医(だと思っていた)。結婚は意識しているようで、それとなくそういった話をしてみるものの桔平はあまりその気がなさそう。

ただし、そういった状況でもちゃっかり合コンには参加。由加利が酔っ払って帰宅し、桔平に介抱される場面がいくつか描かれますが、綾子との会話から実はそのうち1度は合コン帰りであったことがわかります。

 

医者という優良物件をキープしつつ、結婚の可能性を見極めながらほかの選択肢も探し続けるというしたたかさは恐れ入ります。しかし、あくまでも仕事優先で、桔平と対立する様が描かれます。"収入の多い自分が稼ぐ"という意識が会話の随所に現れていて、とても現代的な思考だなと思いました。

 

また、一年ほど前に『モテキ』と『タラレバ娘』を比較して30代男女の恋愛観について書いたことがありました。

hiroki0412.hatenablog.com

 タラレバ娘では、仕事がうまくいくとプライベート(恋愛)がうまくいかない*1という独身女性のジレンマが描かれていましたが、由加利は仕事でも"ウーマンオブザイヤー"に輝き、プライベートでも桔平と幸せな時間を過ごしており、一見すると勝ち組的な人生を送っています。

 由加利の生活は、現代の働く女性が目指す"理想"の表れなのかもしれません

 

高橋一生長澤まさみだと絵面が美しい

 余談ですが、高橋一生長澤まさみが恋人役の映画だと絵面がとても美しいです。「嘘を愛する女」の画像検索結果

出典:長澤まさみ、高橋一生の嘘に号泣!?『嘘を愛する女』最新予告編が解禁! - 日映MovieWalker|日映シネマガ

 

まとめ:自分の愛した存在が嘘でも愛し続けられるのか?

自分の愛した存在が実は虚像だった…

実際の事件をベースにしているだけに現実にあり得ないとも言えません。

実際起こった場合、名前や出生地、仕事など、あらゆるものが嘘だと知ってもその存在を愛し続けるというのは、相当難しいと思います。

ただ、1つ言えるのは、小さな嘘であれ、大きな嘘れあれ、「なぜ嘘をついていたのか?」が重要だと思います。

その嘘の裏にある真実が自分にとってどのような意味を持つのか?

まずは由加利と同じように「なぜ嘘をついていたのか」を突き止めようとするでしょう。

そこにどのような結末が待っていようとも、真実を明かさずにはいられないはずです。

 

愛なき嘘か、愛ゆえの嘘か?

 

嘘を愛する女 (徳間文庫)

嘘を愛する女 (徳間文庫)

 

 

*1:むしろ恋愛がうまくいかないから仕事に全力を注ぐことで結果的にうまくいくということかもしれません