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【映画】『羊の木』 罪の十字架を背負った人々の再出発を阻む壁

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 

新年から邦画が豊作の予感ただよう2018年、3作目は『羊の木』を見てきました。

hitsujinoki-movie.com

原作はマンガ

原作は同名のマンガですが、内容はかなり異なるようです。

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映画では、市役所の月末(つきすえ)と6人の犯罪者、そして月末の幼馴染の文(あや)が中心的な登場人物です。

一方、原作では、魚深市に転居してくる元犯罪者は11人います。また、文が登場しないだけでなく、そもそも主人公は市長(鳥原)です。

映画化にあたって大幅な変更が加えられたようです。

 ただ、魚深市が元受刑者を受け入れる更生プログラムで起こる事件を描いている点では同じです。

 

タイトルの意味に関する考察

"羊の木"とは何を意味しているのでしょうか?

作中に出てくる"羊の木"のモチーフ

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 引用:amazon

 

“羊の木”で検索しても該当する内容が出てきませんでしたが、"羊の木 伝説"で検索すると、バロメッツというそれらしいものについて解説がありました。

 

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スキタイの羊、ダッタン人の羊、リコポデウムとも呼ばれるこの木は、本当の名を「プランタ・タルタリカ・バロメッツ」といい、ヒョウタンに似ているものの、引っ張っても曲がるだけで折れない、柔軟な茎をもっているとされた。

時期が来ると実をつけ、採取して割れば中から肉と血と骨をつ子羊が収穫できるが、この羊は生きていない。実が熟して割れるまで放置しておくと、「ぅめー」と鳴く生きた羊が顔を出し、茎と繋がったまま、木の周りの草を食べて生き、近くに畑があれば食い散らかしてしまう。周囲の草がなくなると、やがて飢えて、羊は木とともに死ぬ。ある時期のバロメッツの周りには、この死んだ羊が集中して山積みになるので、それを求めて狼や人があつまって来るのだと言う。この羊は蹄まで羊毛なので無駄な所がほとんど無く、その金色の羊毛は重宝された。肉はカニの味がするとされた。

出典:wikipedia

 

羊は、おとなしく従順な家畜であり、人間にとっては羊毛や羊肉という自然の恵みを与える動物です。

 

 本作では、6人の元受刑者が登場します。劇中で明かされますが、全員が殺人犯でした。うち5人は魚深での新たな人生をスタートするため、周囲の目に立ち向かいながら新たな生活に溶け込めるよう努力します。

しかし、1人だけ「人殺し」という過去から全く変われない人物がいます。

 

これらのことから、5匹の羊=再出発した元受刑者たちを象徴していると考えられます。

5匹である理由は、うまく更生に成功し魚深に恵みをもたらすのが5人であり1人はそうではない、ということを暗示しているのではないでしょうか?

 

そしてもう1つ、映画開始冒頭に以下の文章が引用されます。

その種子やがて芽吹き タタールの子羊となる

羊にして植物

その血 蜜のように甘く

その肉 魚のように柔らかく

狼のみ それを貪る

「東タタール旅行記」より

出典:『羊の木』HP

基本的には、"羊の木"の概念と同様の趣旨を述べています。

このうち、「狼のみ それを貪る」という文章。

上述のバロメッツに関する説明にもありますが、この羊の木は狼を惹きつけるようです。

 

6人のうち、1人が今なお殺人者であるーー。

 

「羊の皮を被った狼」という表現がありますが、羊の木と狼の関係性が服役を終えてもなお人を殺すサイコパスの存在を暗示しているように思います。

 

まとめ:社会の病理を凝縮した作品

本作は、現代の日本社会が抱える病理を凝縮しています。

 

受刑者収容の重い税負担、元受刑者の更生、被害者家族による犯罪の連鎖、過疎化、DV…

 

6人の登場から、不気味な言動、起こってしまった事件ーー。

サイコサスペンス的展開の中で描かれる、それぞれの背景や社会の認識に目を向けると、我々が解決しなければならない問題を多く孕んでいることがわかります。

 

また、身近にいる人の身元が実はよくわからず、疑心暗鬼に陥るさまは『嘘を愛する女』にも通じる"人を信じることの難しさ"を教えてくれます。

 

hiroki0412.hatenablog.com

 基本的には、日常に入り込んでくる殺人鬼というハラハラドキドキを楽しむ映画ですが、その過程で描かれる日本が抱える課題についても改めて考えるきっかけを与えてくれる作品かもしれません。

 

ちなみに、映画のラストは意外とあっけなく終わります。

途中から何となく展開も読めてしまいますが、そこはご愛敬。

内容的には、『悪の教典』のようなサイコパス作品を期待しましたが、若干中途半端でした。

 

悪の教典

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悪の教典〈上〉 (文春文庫)

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