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【映画】- 35『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』女の欲望渦巻く隔絶された世界

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 

予告から気になっていた『ビガイルド』見てきました。

beguiled.jp

 たまたま、初日で鑑賞しましたが結構客入りは良いようです。

 

 

南北戦争中の閉ざされた女学院

舞台は南北戦争中の南部。それぞれ様々な理由から女子学園で滞在している教師と生徒たちのもとに北部の負傷兵が流れ着いてきます。

1864年。美しい鳥のさえずりが響くバージニア州の森には、遠くから絶え間なく大砲の音が聞こえ、3年目に突入した南北戦争が暗い影を落としていた。キノコ狩りをしていた女子寄宿学園に通うエイミー(ウーナ・ローレンス)は、傷を負った北軍兵士マクバニー(コリン・ファレル)を発見。手当をするため学園へ連れ帰ることに。マーサ・ファーンズワース女子学園は、園長のマーサ(ニコール・キッドマン)、教師のエドウィナ(キルスティン・ダンスト)、そして家に帰ることができない事情を抱えたエイミーをはじめ、アリシアエル・ファニング)、ジェーン(アンガーリー・ライス)、エミリー(エマ・ハワード)、マリー(アディソン・リーケ)の5人の生徒が暮らしていた。招かざる敵兵の出現にはじめこそ戸惑うものの、キリスト教の教えに従い回復するまで面倒を見ることに。

 

男子禁制の学園で暮らしていた乙女たちは、ワイルドでハンサムなマクバニーに興味津々。早熟なアリシアは思わせぶりな視線を投げかけ、エドウィナはブローチをつけて秘かにおしゃれをし、まだ幼いマリーも負けじとエドウィナの真珠のイヤリングをつけて着飾る始末。園長のマーサはそんな彼女たちをたしなめるものの、手当をするために久しぶりに触れた生身の男性の身体に、彼女自身も胸の高鳴りを抑えきれずにいた。手厚い看病を受けるマクバニーは、誠実な態度で信頼を勝ち取り、7人全員から好意的に受け入れられるまでに。ただし、誰にでも愛想を振りまき、女性たちが自分に虜になることを楽しむかのような態度は、秩序を保ってきた集団の歯車を次第に狂わせていく。

引用:公式HP

 自然光中心の撮影や、あえて披露させたドレス・銀食器など映像や小物面でも、時代の雰囲気を表現するためかなり工夫がなされているようです。

 

また、そもそもこの内容はクリンストイーストウッド主演で1971年に公開された『白い肌の異常な夜』を新たにソフィアコッポラが女性視点から描きなおした作品です*1。原作としては、小説「欺かれた人々」があるようです。

 

 

それぞれの欲望が男を引き寄せ狂わせる

当初は、招かれざる客に対して驚き、恐怖、興味などそれぞれに異なる感情を振り向けていた女たちも、女性だけの閉鎖的な空間で醸成された欲望に突き動かされ、徐々に男を自分に引き寄せようとし始めます。

 

興味深いのは、女性たちの年齢によって、マクバニー伍長への対応が異なる点です。

 エイミーは、友人として。アリシアは、まだ見ぬ性の好奇心の対象として。

エドウィナは、久方ぶりの恋の相手として。マーサは、自身の苦悩を分かち合えるパートナーとして。…

 

それぞれが、それぞれの立場で、閉ざされた女の花園に流れ着いた男を欲しますが、そのゆがんだ欲望が交錯し、平穏だった女学院を混乱に陥れていく様は、非常に人間的でありながら恐怖を覚える状況でした。

 

まとめ:男視点で見た恐怖 

 

男性の目から見ると、コッポラ監督が女性視点に切り替えた本作は、非常に理不尽かつ恐ろしい作品になっています。

 

監督は、集団心理というものに非常に興味を持っているようで、今回も個人の欲望の果てに集団としての女性たちに男が排除されます。

 

個人的に、非常に印象に残っているのは、女性陣がマクバニー伍長を見るいくつかのシーン。

基本的には、女性陣が集まっているシーンでは、男に対する敵意のようなものを感じる構造(顔が背けられていたり、挑むような目線を向けていたり)で表現されています。

 

それぞれ個人を見ていくと、マクバニー伍長に抱いている感情にはグラーデーションがありますし、時間の経過とともに感情の変化があるのですが、集団としての"女性たち"となったとき、男であるマクバニー伍長は一貫して排除の対象です。

 

最後まで愛したエドウィナと好奇心が満たされ切り捨てたアリシア。そして、あくまでも集団秩序を重んじたマーサ。

 

この女性が集まった際の複雑な集団心理は、この時代に限らず現代でも通じるものがあります。

そして、マクバニー伍長のごとく、男は欲望に対し忠実であり、こうした複雑な行動原理が理解できないため、言いようのない恐怖を覚えるのではないかと思います。

 

*1:残念ながら『白い肌の~』を見たことがなかったので、勉強しておきます。