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社会システムのプログラムとしての法律

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nekozukiは一応法律を専門として大学を卒業した人間ではあるが、正直法律の研究は肌に合わなかった。法律の中でも法社会学という特殊な研究分野に放浪していたくらいだ。

 

何が肌に合わなかったかというと、いわゆる法律学が実定法*1の個々の条文や各判例について、他の法律との関係性や諸外国の立法上状況との比較など、「解釈学」であったことに起因すると思う。

複雑系としての社会において、Aという行動がなされた場合にどのような法的救済を行うべきかを網羅的に予定しておくことは不可能に近い。

よって、実定法上は、より抽象的な概念のA'(A'⊃A)の場合の処理のみ規定される。多くの方が想像される以上に法律上は抽象的なことしか書かれていないため、どれだけ法律を眺めても結論に結びつくことはないことが多い。

そこで、「Aの場合はどうなのか?」「隣接する条文1との調整はどのようにすべきか?」などについて、研究するのが法律学(実定法学)の役割である。また、これと両輪で、法システムの中で解釈を担うのが裁判所である。多くの学者がそれぞれの研究テーマを持ち法律を研究しているものの、たいていは何らかの紛争が発生しなければ論点は明示的にならない*2。明示的でない、もしくは、論点として認識されたもののデータ(判例)が蓄積されていない領域については現実の問題意識が置き去りになり、理論が上滑りすることがままある。非常に細かな論点(条文の1単語)に対して無数に学説が入り乱れていたりする。

そういった議論を聞くにつけ、いったいどんな意義があるのか疑問に思わざるを得なかった。

 

法社会学はいわゆる実定法学とは異なり、基礎法学に分類される*3法社会学の定義をwikiから抜粋すると、

法社会学は、社会における実体法・法制度がどのように現実に作用して、現実に人々がどのように反応しているのかについての状況を分析して明らかにすることによって、立法や現行法の運用の改善に応用することを目的とする。

出所:wikipedia

となる。正直、裁判員裁判の制度分析やADRの制度検討などは全然面白くないが、システムとしての法を分析するというアプローチは非常にユニークだと思う。あまり現在の学部生が興味を持たないのが嘆かわしい。また、基本的に法を相対化して分析する(内部に立ち入らない)ので、学問としての成り立ちが学際的でもある。法社会学という言葉の通り、社会学的な研究アプローチを行うことががある一方、学問領域に法と経済学や法心理学などを包摂していたりする。割と何でもありだ。

 

やっと本題。

 

法治国家においては、法律によって①利害の調整②富の再分配等が行われ、私的な制裁行動は禁止される。つまり、社会的平等が図られるということになる。各国の政治信条や文化、その当時の時代背景によって、これらの達成目的となる社会的平等概念も異なっている。ゆえに、それを実現する法律も国によって異なる。

ところで、社会を1つのシステムとして見た場合、法律は社会システムを機能させるための"プログラム"であり、法を取り巻く活動はある種の市場原理に近いものがある。

書店で六法*4をめくってもらうとわかるが、if構文的なもの(AならばB)が非常に多い。また、例外処理として、"但し書き"(ただし、Cの場合を除く)が付されているものもある。これはまさに、プログラミングのアルゴリズム的構成である。

ただし、冒頭で述べた通り、現実は複雑であり、必ずしも条文で想定されている条件分岐に当てはまらない場合がある。というよりも、ほとんどの場合条文だけでは判断がつかない。

その結果、法的な結果が"error"=法的紛争として出力された状態になる。そういったerrorを個別に修正していくのが、裁判所(裁判官)の仕事といえる。errorの形で出力された法的紛争は裁判において追加のコード(判例)を与えられることで、以後同様の状況に至った場合は正しい結果を出力するようになる。

ゆえに裁判所は法システムにおいて1次的な解釈を提示する最も重要な機能であるといえる。

 

なお、必ずしもerrorを出力した処理がすべて裁判によって再処理されるわけではなく、調停のような直接裁判所が関与しない当事者同士の合意(裁判外紛争処理手続)により問題が解決してしまうこともある。この場合、共通解としての処理が確定するわけではなく、あくまでのその個別事例におけるerror部分をデバックするに過ぎない。

 

このような感じで、法律を別の確度から見ていくと非常に面白いという研究をしていたものの、社会を知らない学生にはあまりにも広大で辛すぎました。

社会人を経験したうえで、改めて勉強したい。

 

 

※お勧めの本

クリエイティブ関係の企業法務を専門にしている弁護士の本。イノベーションを起こすためにも能動的に法律を形成していくべきという主張をしている。

アメリカのロビー活動的なものが日本でももっとあればいいのか?

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

 

 

上述の本の著者がお勧めしていた本。先進的にネット規制等が議論された本…らしい。

読もうと思って読めてない。

CODE VERSION 2.0

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 法と経済学の入門書的なもの。自分で書いておいてなんだが、法社会学に含まれるかどうかは正直怪しい(民法会社法独占禁止法、労働法なんかが議論になっていることが多い)。でも、視点がいずれの学問にも収まっていないので面白い。

エコノリーガル・スタディーズのすすめ -- 社会を見通す法学と経済学の複眼思考
 

 

*1:実際に規定されている法律そのもの。民法や刑法など。

*2:何も具体的な紛争が発生していないにもかかわらず学者による指摘が多く入る法律・条文はよほど欠陥のある構造か、すでに時代錯誤な規定となっているかのどちらかである。

*3:そのほか、法哲学法思想史なども基礎法学になる。

*4:学生はよく六法全書を持っているのかと聞かれるが、六法"全書"を購入する学生は普通いない。論点になる条文は限られていて、それらをまとめたコンパクト版のデイリー六法かポケット六法を毎年買い替えるのが定番。