ダラダラ金融日記

金融機関に迷い込んだ猫(好き)がダラダラする様を描くブログ

英語記事 和訳:Why Wall Street is cheering the return of the ‘divi recap’(2/5/2019)

少々仕事が立て込んだりした結果、更新をさぼっている間に1年近く経ってしまっていました…

更新してなくても意外と見に来てくださってる方がいるものなんですね。

 

久しぶりの更新は"divi recap”についての英文記事和訳から始めたいと思います。

www.ft.com

 What do investment bankers who deal in risky corporate debt do  when there are not enough racy loans to meet demand from yield-starved investors? A proposed deal this week involving the owners of PPD , a drug research group , gives us  a clue :they get private equity firms to create some out of thin air.

*利回りに飢えた投資家からの要求を満たすようなきわどいローンが十分にないとき、リスクの高いコーポレートデットを取引するインベストメントバンカーは何をするだろうか?今週、医薬調査会社であるPPDの所有者に関して提案された取引は、我々に手がかりを与えてくれる。というのは、PPDはプライベートエクイティファームに対して薄い空気(=何もない状態)からなにがしかを作り出そうと言うのだ。

出典:記事より抜粋

マーケットは定常的な金融緩和状態で、債券利回りが低下しており、債券投資家は求める利回りを得られず、運用に苦慮している状況です。

結果として、これまでであれば需要がなかったようなよりリスクが高い(利回りも高い)債券が発行されることが多くなっています。

 

“Dividend recapitalisation” is hot once more on Wall Street. In simple terms,  a company raises debt to hand cash to its owners. The business gains no benefit from the money borrowed but it takes on the additional risks associated with a fresh slug of high-interest debt.
*"Dividend recapitalization=配当による資本再構築"は再びウォールストリートでホットな手法だ。簡単に言うと、企業は所有者に対する(分配のための)現金を手にするため負債を調達する。事業は借入資金から何ら利益を得ないが、新規の高金利負債の調達によって、追加的なリスクを負うことになる。

出典:記事より抜粋

表題の"div recap"についての説明です。要は、負債を調達し株主であるバイアウトファンドに分配するということですね。

一般的に、バイアウトファンドは自身が出資するエクイティ部分のリターンを向上するために、買収資金について借入を用います(LBO=Leveraged Buy Out)。ファンドはこのLBOで調達した借入を返済しつつ、value upを図ることで株主価値を引き上げ、エクイティリターンを獲得します。

記事中の"div recap"は、既存のLBOファイナンスに加えて(もしくは、コーポレートファイナンスに切り替えたうえで)さらに追加で借入を行い、本来株式の売却まで回収できないファンドの投資金額を一部回収することを目的としています。

 

But why would lenders agree to “divi recaps”? Piling debt on a company for no productive purpose sounds like the antithesis of a prudent investment decision.

The reality is that while institutional investors bristle at facilitating such aggressive financing, they have cash to invest and there are precious few deals, meaning they become less picky.

*しかし、なぜレンダーは"divi recap"に承諾するのだろうか?非生産的な理由で企業の負債を積み増すことは、プルーデントインベストメントディシジョンとは対照的な判断のように思える。

*現実には、機関投資家はそのようなアグレッシブなファイナンスを促進することにいら立っている一方で、投資すべき資金があるのに取引はごくわずかで貴重だ。つまり、えり好みできる余地が少なくなっているのだ。

出典:記事より抜粋

この記事で一番興味深かった箇所です。この前にファンド(株主)側のメリットについても記載がありますが、それは分かり切っているので端折ります。

LBO(英文記事だとleveraged loanと書かれます)だと、当初実行時からかなりのハイレバレッジ(EBITDAの7.0~8.0xなど)になります。それを何とか期中に返済していくわけですが、divi recapを認めると、またレバレッジが上昇するだけでなく、債券投資家よりも先にファンドがエクイティの回収を図っている状態になります。本来、債権者としては相当限定された場面以外では認められない仕組みだといわざるを得ません。

にもかかわらず、divi recapが横行するのは、マーケットに債券(特に魅力的な利回りの商品)が枯渇し、こういったリスクの高い債券でも投資をせざるを得ない状況になっているからだということです。

 

US credit markets are in the grip of a supply-demand imbalance. So far this year, $187bn of leveraged loans have been issued, according to data from Refinitiv’s LPC. That compares with $465bn at the same point last year. Little wonder the “divi recap” is back with a vengeance.
アメリカのクレジットマーケットは、需給不均衡にとらわれている。リフィニティブのデータによると、今年の現時点まで1870億ドルのレバレッジドローンが発行されている。対して、昨年の同時点では4650億ドルが発行された。(投資機会の少なさを考えると)"divi recap"が精力的に復活してきたのも無理はない。

出典:記事より抜粋

実際のレバレッジドローン発行状況で見ても、この記事が書かれた2019年5月時点の発行金額は前年同時点比で3分の1程度だったようです。但し、買収ファイナンスの金額は大型のM&A案件の有無で大きくぶれるので必ずしも枯渇してきているといえるかは微妙だと思います。

 

以下、記事では具体事例についての説明が続きますが、省略します。

 

divi recap関連で、ちょうどリーマン前頃に書かれたブログを発見しました。

flbanker.exblog.jp

リーマンの時も同じだったんですね。状況として似ているのは、買収価格の高止まりでしょうか?(EV/EBITDA multipleで12.0xを超えるLBO案件も珍しくなくなってきました)

 

この方のブログでは、「日本でも今後流行るだろう」とされています。

実際のところですが、少なくとも買収ファイナンスに私がかかわる限りにおいて、一般化するほどにdivi recapが行われているという認識はありません。

日本でも債券市場の状況は近しいものがあるとは思いますが、よく言われるように金融構造の違いが影響しているように思います。

アメリカでは、直接金融中心であり、記事中のレバレッジドローンについてもCLOとして証券化され機関投資家が投資する商品になります。故に、運用先が枯渇した機関投資家が泣く泣くリスクの高いdivi recapにも応じています。

しかし、日本では間接金融中心であり商業銀行が資金提供の中心的担い手です。

そうすると調達手段が預金であるがゆえに、運用での利回り期待もそれほど高くならず、(預金という元本保証の調達手段であるため)むしろ高いリスクのものは回避したがるようになります。

国内で、商業銀行がdivi recapを認めるようになるのはもう少し時間がかかりそうです。

 

また、LBOにおいては、ハイレバレッジになると、銀行(シニアローン)に加えて、メザニンファンドによるメザニンファイナンスが提供される場合があります。

 ※メザニンの概要は以下をご参照ください

www.finance-neko.com

このときはまたさらに難易度が上昇します。というのも、メザニンファンドからすると、自身より上位の(もしくは同列の)債権が増加し、自分より下位のエクイティが優先的に回収する構図になるからです。

 

このあたりは国内だとまだまだ、2層以上のトランシェ構造の案件も少ないので、今後議論されていくのかもしれません。

 

 

 

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