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メザニンファイナンスとは何か?:概要

 最近お仕事でメザニンファイナンスを扱うことが多くなったので、この一般的ではない商品について、自分の整理もかねてまとめたいと思います。

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1:総論

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出所:筆者作成

そもそもメザニンファイナンスの"メザニン"とは何でしょうか?

ストラクチャードファイナンスにありがちな海外の考え方をそのまま持ってきたことによる英語表現そのままなので分かりにくいですが、

Mezaninne = 中二階

を指します。

中二階という言葉は図を見るとイメージがしやすくなると思います。

資金を外部から調達する仕組みを考える場合、

  • 負債による調達(銀行借入、社債)
  • 資本による調達(株式[普通株]、CB)

がまずは想定されます。

 

メザニンファイナンスは、負債と資本の中間的な性質を有しており、商品設計によって「負債的」であったり「資本的」であったり柔軟な設計が可能な点が特徴です。

 

 

2:商品設計

まず、メザニンファイナンスといえど形式上は借入又は社債(デット)*1か株式(エクイティ)の形式をとります。ただし、そこにいくつかの契約条項等を設定することで 

ローン⇒劣後ローン
普通株優先株

とすることでメザニン性を付与します。

 

  • 劣後ローン概要

劣後ローンという名前の通り、一般的なローン(シニアローンといいます)に対して、元利金の償還が劣後するローンを指します。

主な特徴は

  1. 劣後特約
  2. 元本一括償還(Bullet)
  3. PIK(Payment In Kind)

 

劣後特約は言葉通り、シニアローンに劣後することを契約上設計する文言です。

例として、トクヤマの劣後ローンの劣後特約に関するリリースを見てみます。

当社に対して、清算手続の開始、破産手続開始の決定、会社更
生手続開始の決定または民事再生手続開始の決定等がなされ
た場合、本劣後ローンの貸付人は優先株式および本劣後ロー
ンを含む同順位劣後債権等を除く一切の債務全額が支払われ
た後に、契約に従って弁済を受けることができる。
本劣後ローンの各条項は、上位債務の債権者に対して不利益を
及ぼす内容に変更することは認められていない。

出所:トクヤマニュースリリース

劣後特約にも2種類あり、相対劣後(債権者間協定[ICA]を締結し、シニアレンダーと別途劣後性について合意を得ておく形式)と絶対劣後(各ローン契約において債務者とのみ契約を締結する形式)があります。相対劣後の場合、シニアレンダーが利益を得ることになるため、劣後条項をローン契約に挿入するだけでは足りず、別途債権者間協定を締結することが必要になります*2

 

また、元本償還は原則期限一括償還(ブレット=Bullet*3)であることが一般的です。合わせて契約期間をシニアローンよりも長い期間とすると、よりシニアの保全性(メザニンの劣後性)が明確になります。

 

最後にPIKです。これが一番ユニークかもしれません。PIKとはPaymant In Kindの略称であり繰延金利を指します。

以下で、ざっくりとしたメザニンの利用シーンを説明しますが、例えばコーポレートファイナンスにおける事業再生に近い案件やLBO案件の場合、期中のキャッシュアウトはできうる限り抑えたいことが多い一方、メザニン投資家のリターン期待に応えるため金利を一部将来に繰り延べることがあります。この繰延部分をPIKといいます。

PIK金利は毎期発生し、その都度元本に振り替え(元加=Capitalization)されます。よって、PIKが生じれば生じるほど元本は大きくなり、以降の現金金利およびPIK金利はますます大きくなっていきます。

 

  1. 優先配当
  2. 取得条項&取得請求権
  3. PIK

優先株という名前の通り、エクイティでファイナンスを設計する場合は優先配当を行うことでメザニンにします。

ちなみにベンチャー企業ファイナンス界隈ではエクイティファイナンス=優先株ですが、この場合は残余財産優先の形式です。詳しくは、下記起業のエクイティファイナンスが参考になります。

メザニンはあくまでも原則固定クーポンのファイナンスという位置づけですので、優先配当を求めることがない契約になります*4

 

優先株でのファイナンスの場合は、そもそも償還期限という概念は株式という形式上存在しないことになってしまいます。そこで取得条項又は取得請求権*5に基づいて当該優先株の償還を行うことでExitします。いずれも一定の行使禁止期間を設定したうえで、お互いに期間経過後権利行使が可能になる建付けとなっています。

 

最後にPIKです。これは、劣後ローンにおいて説明済みですので詳細は割愛します。

劣後ローンとの比較感でいうと、いわゆる明確な元本というものがないため、繰延配当分は株価を調整し上記取得条項又は取得請求権行使時の価額に反映します。

 

3:利用シーン/条件イメージ

あまり一般には知られていませんが、いろいろなところでひそかに使われているのがメザニンです。

中小企業のコーポレートファイナンスではやはり母数が多いだけに広く使われています。特に、金融庁が「資本性借入金」として利用を奨励している条件に合致しているものは金融機関(銀行)の自己査定上"資本"としてみなされるため、マーケットにおいてエクイティファイナンスが実行できない中小企業にとっては非常に重要な施策であると思います。

「資本性借入金」の積極的活用について:金融庁

資本性ローン|日本政策金融公庫

条件は大体リターン4~8%、期間5年超などというイメージです。

資本性劣後ローンとして設計する場合日本政策金融公庫の商品がまずはメルクマールになることが多いです。

上場企業のコーポレートファイナンスにおけるメザニンは特に"ハイブリッドファイナンス"と表現されます。一般的にはブリッドファイナンスを利用するのは格付機関より外部格付を取得している企業で大型の資金調達が必要な企業です。

ハイブリッドファイナンスは格付機関による格付上一部が資本として認められる*6ため、一般的なデットファイナンスよりも格付の下振れ圧力を軽減することができます。

R&I

https://www.r-i.co.jp/methodology_cross-sector/2018/06/methodology_cross-sector_20180608_jpn.pdf

S&P

https://www.standardandpoors.com/ja_JP/delegate/getPDF?articleId=2047408&type=COMMENTS&subType=CRITERIA

条件は、金利が1%前後*7、期間は30または60年*8といったイメージです。

金利水準は各企業によって異なりますが、シニアローンがマイナス金利以降低スプレッド化していることで非常に低利化しています。

主に、バイアウトファンドが事業会社を買収する際に、ファンドとしての出資(エクイティ)とは別に買収用SPCが、買収対象の事業会社のキャッシュフローおよび資産を担保として調達するファイナンスを指します。

こちらも低金利/金融緩和の影響を受け、レバレッジ水準のワイドニングが進んでいますが、それ以上に買収価格の高騰が進んでいる印象です。

直近での取引はEV/EBITDA multiple 10x~12x程度がざらです。

シニアローンの上限が7x程度、ファンドは極力エクイティを減らしつつシニアの要求する資本バッファを満たす2~3xを拠出しても不足する部分が出てくる場合があります。

こうした際に、メザニンとして0x~2xが投資されます。

条件は、金利が7~8%、期間は7年超といったイメージです。ただし、基本的には1~2年の間にコーポレートのリファイナンスによりメザニンはExitすることが多い環境です。

  • その他

その他、アセットファイナンス(債権の流動化、不動産ファイナンス)やプロジェクトファイナンス等でも利用されていますが、ざっくりとしたストラクチャーは同様なのとそこまで詳しくないので割愛します。

なお、クラウドファンディングの中でも"ソーシャルレンディング"と呼ばれる分野の裏付資産は劣後ローンが散見されます。

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 どこまで投資家がスキームを理解しているのか知りませんが、ここまで説明してきた通り相当程度リスクをとった商品であることは理解しておくべきだと思います*9

4:何のために必要なのか?

業界外の方にはよく「何のために必要なの?」と聞かれます。

  • シニアローンで十分では?

これまで銀行がひたすら貸し続けてきたからか、「借入(シニアローン)でいいじゃん!」という方が結構います。シニアローンで調達できるのであれば問題ありません。ただし、シニアローンですべて調達できるとは限りません。また、これが当該金融機関の融資姿勢の問題であれば他行に相談することで追加で借り入れ可能かもしれませんが、当社のBSの構成上ローンでの調達がそもそも厳しい場合もあります*10。一部を資本性の劣後ローンで調達することにより、今後のデットファイナンスのしやすさも変わる可能性があります。

上記はコーポレートを念頭に置いて説明していますが、ストラクチャードファイナンスでも同様です。初回実行時にはシニアが抱えきれない分のリスクをメザニンが負担し、順調に償還が進んだ際にリファイナンスによりシニアに切り替えるのが一般的です。

逆に、「シニアローンが自己資本の問題で難しいならエクイティでいいじゃん」という方もいらっしゃいますが、これはさらにハードルが高いです。エクイティファイナンスは、中小企業の場合そもそも機会がほぼないほか、上場企業でも株価や既存株主の希薄対応などが必要でいつでも実行可能というわけではありません。

ストラクチャードファイナンスの場合は、そもそもエクイティ投資家の投資金額を最小化しリターンを最大化することが目的であるため、エクイティ投資金額が増えることで期待リターンがハードルに届かなくなる可能性もあります。

 

以上のようにシニアとエクイティのそれぞれのニーズから生まれてきたのがメザニンです。

非常に特殊な存在で面白いためぜひ興味ある方は調べてみてください。

 

 ※参考文献

 明確なメザニンについての解説書はないですが、断片的に説明されていて面白い本を列挙しておきます。

ハイブリッド・ファイナンス事典

ハイブリッド・ファイナンス事典

 
DES・DDSの実務【第3版】

DES・DDSの実務【第3版】

 
買収ファイナンスの法務(第2版)

買収ファイナンスの法務(第2版)

 
日本のLBOファイナンス

日本のLBOファイナンス

 
M&Aファイナンス

M&Aファイナンス

 
会社法のファイナンスとM&A

会社法のファイナンスとM&A

 

 

 

*1:便宜上ここではローンで説明します

*2:当該ローンの劣後性は、シニアレンダーにとって民法537条「第三者のためにする契約」となり、各債権者からの承諾が必要となる可能性がありますが、上記トクヤマのような上場企業の場合はレンダーが非常に多く承諾を得るという事務は現実的でないので、絶対劣後による契約となっているものと認識しています。

*3:ちなみに、日本では期限一括を弾丸という意味でBulletといいますが、海外ではLump sum=塊という表現のほうが一般的なようです。

*4:劣後ローン/優先株に限らず、LBOファイナンスのうち対象会社のExitがIPOにて計画されており、レバレッジ水準が相当程度低い場合はエクイティキッカーを付与しよりエクイティ性を高めたうえでアップサイドを要求する場合もあります。

*5:取得条項は発行体側(会社法2条19号)、取得請求権は投資家側(会社法2条18号)の権利です。

*6:上記資本性借入の要件と調整することで銀行の自己査定上も資本と認められる可能性があります。また、会計基準IFRSとすることでそもそもの形状形式を資本とすることも可能です。

*7:ただし、リファイナンス/償還の蓋然性を高めるため、初回コールのタイミングで金利のステップアップが設定されます。

*8:格付機関の資本要件として超長期であることが求められます。無期限=永久という場合もあります。

*9:すでにデフォルトが多数発生して問題になっているので遅いかもしれませんが。

*10:銀行が企業の与信をする場合、純資産(自己資本)の厚さを重視します。